プライミッツ・マーダーという怪物が何者か

型月の設定には昔から、プライミッツ・マーダーという怪物が居る。

 

月姫読本の時代から、死徒二十七祖という設定解説欄にて、死徒二十七祖の第一位、ガイアの怪物、霊長の殺人者という名前で語られてきた、惑星を単身で滅ぼせる勢(ORTや朱い月)に比肩すると考えられていた型月最強勢の一角である。

 

FGOにてその正体が、「比較」の理によって「相手より強くなる」能力を持つ4番目の人類悪である事が明かされた。

人類に対する絶対殺害権など、対人類という言葉を強調されてきたプライミッツ・マーダーだが、その理由はどうやら、力の源が人類だったかららしい。

人間同士の競争と成長、そして妬みや悔しさを糧として、常に相手より強くなる獣。

つまり、「霊長の精神活動をエネルギー源として、常に対象を上回る規模で顕現する」。

型月作品をやっていれば、一度は聞くフレーズである。

 

要するに、本来は霊長継続の為に使用されるアラヤの抑止力を、霊長殺害の為に使用する人類悪と表現できる。

「人類が発展するほど強くなる」という人類悪の性質の中で、最も型月固有設定に寄った存在であると言えるだろう。

死徒二十七祖と英霊召喚が両立しない件

……その世界に生きる者たちには預かり知らぬことではあるが、英霊召喚を可能とする世界において、死徒の頂点と言われる二十七祖は存在しない。

 路地裏ナイトメア 1巻 p196 死徒【しと】 の項より

 

 とかいう、クロスオーバー者を皆殺しにする新設定からしばしが経ったので、考察。

 

 死徒の頂点と言われる二十七祖は存在しないのが確定したが、「二十七祖があったら祖に該当する吸血鬼」が存在することは確認されている。

 まず、生前戦争中にネロ=カオスに乱入されて痛い目を見た中東勢が居て、朱い月と対決して吸血鬼化したゼルレッチが居て、それと知り合いの迷宮内の錠前コーバック=アルカトラスが居て、魔眼蒐集列車の前オーナーのリタ・ロズィーアンが居て、Hollowのパラレル士郎が参加するカジノを運営する魔城のヴァン=フェムが居る。

 つまり、朱い月を起源とする死徒も存在しており、朱い月ももちろん居るだろう。

 

  また、死徒二十七祖の第一位「プライミッツ・マーダー」を抑えるのに、"英霊"7騎が必要とされる……という設定が10年くらい前に雑誌で発表されていたが、これはつまりFGOで名前が判明した「決戦魔術・英霊召喚」の事を指すと思われる。

(グランドサーヴァント7騎が必要とか吹かしすぎじゃねーの感も感じるが、プライミッツ・マーダーが「地球のアルティミット・ワン」である場合、「鋼の大地」で語られた通り、単体で惑星を滅ぼせる規模の怪物なので妥当とも言える。)

追記: 案の定なんかあった件

プライミッツ・マーダーという怪物が何者か - TYPE-MOON設定考察の墓場

 

 また、Hollowでアンリマユが自分より上の殺人者として挙げた「犬(プライミッツ・マーダー)」と「蜘蛛(ORT。水星のアルティミット・ワン)」も、もちろん存在する。

 

 という事で、結構死徒、あるいは祖に納まるはずの吸血種連中は、今までファンが想像した通り、Fate世界にも存在している。

 

 つまり、ここで言う「死徒の頂点と言われる二十七祖は存在しない」というのは、「各々の方法で不老不死を定義し、いずれ蘇る最初の死徒The dark sixに束ねられる二十七祖」という枠組み自体が存在しないという意味であろう。

 

 The dark sixが最初の死徒であり、不完全な存在であり、「システム」と言われる存在である。死徒二十七祖死徒二十七祖として存在しているのには目的があると、各種媒体で語られているが、これを筆者はThe dark sixだと考えている。

 

 死徒二十七祖という枠組みの発生要因となる「何か」と、「英霊召喚」は競合している。これは、大きく2つ可能性が考えられる。

 1つ目は、英霊召喚が可能となる世界では、グランド・サーヴァント等の手により、死徒二十七祖の設立目的である「何か」が達成できない事が確定してしまう、という可能性。ただし、上記で書いた通り、二十七祖の参加メンバーには朱い月やORTプライミッツ・マーダーと、単体で地球を滅ぼせる奴らが複数所属している。グランドサーヴァントと相対したとして、なぜ必ず不可能と言えるのか? という疑問は残る。朱い月が生きていた頃から二十七祖は存在しただけに、さらに疑問は深まる。

 

 2つ目は、これは荒唐無稽な感じはあるが、「目的が既に達成されているから二十七祖は不要」という考え方だ。

 死徒二十七祖という枠組みを作った結果として生まれるのが英霊召喚、あるいは英霊召喚を可能にする何らかのシステム、という事である。

 完全に妄想だけで話をするならば、The dark sixが体現するシステムというのが、英霊召喚をも可能にする基盤である…など。あるいは、The dark sixの復活を待つ…あるいは、The dark sixを誕生させずとも、そもそも「そういう仕組み」が世の中にあれば、わざわざ自らの手で作る必要もない。

 

筆者は2つ目がそれっぽいし、FGO後半のどんでん返しでも使えそうだしで、ありそうだなあと思っている。

 

追記(2017/08/12):

死徒ズェピアの証言によって、Fate世界においては死徒二十七祖結成の可能性が西暦300年頃に摘まれているらしい事が分かった。

そして後書きなどの語り口を見るに、英霊召喚を可能とする世界の方が本来の型月世界であり、「誰かがなにかをした」結果として「死徒が強化され、死徒二十七祖が生まれ、死徒が人類史を■■(否定?)する存在」となったようだ。

闇色の六王権が最初の死徒、神代連盟は4000年前から存在しているという事から、The dark sixの誕生や朱い月の地球への降臨との直接的な関係は否定されたようだ。

 

だが、これは想像になるが、人類史を肯定する人間が倒すべき悪というシステムを誰か(朱い月?)が乗っ取って悪用した結果、人類史を否定する存在として死徒が定義づけられたようにも見える。月姫/Fateの双方に属さない中間世界であるstrange Fake時空(二十七祖が存在し、英霊召喚が可能)での死徒が持っていた対英霊特攻じみた能力も、その説明になるだろう。神霊由来には特攻が効かないという証言もある。

人類史を否定/肯定しうるスケールの存在は基本的に星の頭脳体連中(ガイア、朱い月)だけな気がするので、FGOのストーリーの最後に地球と戦ってもおかしくないと思ったのでここにメモとして残しておく。

朱い月の月落としの威力

朱い月の月落としの威力の根拠となる具体的な表現は、コンプエース2010年12月号の付録のドラマCD「まほうつかいの箱 ~沈黙のルビー アルマゲインパクト~」内にあります。

 

「ここに、隕石が迫ってますよ♪」(ルビー)

「「はい?」」(一同)

「あ、あのぉ~~、冗談ですよね? いつもの感じの」(イリヤ)

「いえ、いたってマジです。10分くらいで地表に激突するでしょう」(ルビー)

「まったく、脈絡が、分からないんだけど」(美遊)

「さっきイリヤさんが願った"世界滅べー!"が、実にむにゃむにゃな感じで、中途半端に叶ったようですねー。静止衛星軌道から隕石を任意の地点に垂直落下させる星呼びの儀。すごいですねー、イリヤさん♪  もうちょっとパワーアップすれば、どこぞの月を落っことした真祖に迫るほどの大魔術ですよぉ~♪」(ルビー)

「え、えぇ~~~!! 私のせいぃ!?」(イリヤ)

「まぁ、と言っても、半端な出来なので、そう大した被害は出ませんよ。こんな程度で世界は滅びません」(ルビー)

「そ、そうなんだ…。よかった…」(イリヤ)

「せいぜい、ここいら半径100mが地図から消える程度です」(ルビー)

「大災害だーーーーー!?」(イリヤ)

引用(文字起こし)元:

 まほうつかいの箱 ~沈黙のルビー アルマゲインパクト~ 第二章 2:10~3:14

 

以上から考えると、少なくとも公式での「月落とし」の規模感は、「隕石の落下より現象の規模が大きい」と考えられます。中途半端版なので世界が滅びない=本来の威力なら世界が滅びるとも読めるものの、実際に隕石の衝突で世界(人類)を滅ぼすには1km程度の大きさの隕石が必要なので、静止衛星軌道にそのサイズの石が転がってはいない関係上、流石に言い過ぎ。ただ、直径200m級のクレーターが出来る=原爆数十個分のエネルギーが炸裂 なので、イリヤ版星呼びの儀でも都市数個程度なら壊滅させられるかも?ここらへんから推察するに、月落としで落とす「鏡像の月」は実際の月よりも遥かに小さく(数十m程度?)、その威力も関東地方壊滅とかその程度だと思われる。

 

2017-01-09 追記

FGOにおいて行われた魔術王による人理焼却が、逆行運河/創世光年(メルブラにおける蒼崎青子のラストアーク、つまりアルクェイドの月落としと同格の必殺技)を達成するための大事業である事がPVで明らかになり、魔法使いの規模感が大幅に拡大されました。つまり、本来、地球の人類史すべてを焼き尽くした膨大なエネルギー(エクスカリバー数億発相当)をしてようやく可能な偉業を、魔法使いは普通に実行可能だということです。そして、魔法の不勉強によって魔法使いに敗れたものの、実力的には魔法使いを上回っている怪物である朱い月のスケール感も大幅に拡大されました。

(※ 元々メルブラでリミッター解除姫君が大陸ピンボールからの生命絶滅が可能という辺りからヤバさマシマシだったわけですが、あれは真祖が星の触覚だから地球環境好きにできるという解釈も可能だったが、今回のは流石に言い訳効かない感がある)

これは、型月現代における魔法使いという存在が「鋼の大地」のアリストテレス達と同じステージに立っていると表現してよいレベルの存在だという事を示唆しています。

更に、朱い月と同格視されがちなプライミッツ・マーダーが人類悪の1つである事も明らかになり、なかなかインフレというか、今まで本編があくまで「都市規模の伝奇モノ」であった型月作品では実感できなかった超存在達のスケールが見えるようになりました。

 

要するに、月落としは本物の月と同質量の石を地表に落下させる、地球の形を変えうる大災害である可能性がかなり高まりました。

 

そう仮定すると「朱い月は魔法というものに対する不勉強によって魔法使いに敗北した」というゼルレッチvs朱い月の話も、例えば「地表に存在する全エネルギーを束ねても押し返せない、理屈の上では防御不可能な超超質量攻撃」を「現在の地球に留まらず、無限の平行世界から組み上げた星の能力をも超える無限の力」で迎撃されて敗れたという解釈も可能になったりします。

そうすると、雑兵ですらエクスカリバー級の攻撃が可能な鋼の大地勢のパワーバランスにも合致しますし、説明しやすいのかなという感じになっているのが2017年現在の最新の解釈になるでしょう。